肝臓病の診断と治療
肝臓病について
2014年にC型肝炎に対する飲み薬が登場し、C型肝炎が治る方が飛躍的に増えてきました。これまで肝臓病の大半を占めていたC型肝炎患者は減少しますが、肝臓の病気が無くなることはありません。
これからは、①肝臓がん(特にC型肝炎が治った後)と②非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュと読みます)が問題となってくると思われます。
①肝臓がん(特にC型肝炎が治った後) 完治後も肝臓がんが出てくる方はいらっしゃいます。肝炎治療前に肝がん治療歴がある方、高齢者(65才以上)、進行した状態(肝硬変に近い)で治った方々は特に注意が必要です。65才以上でC型肝炎が治って、最近は病院に行かれていない方、一度ご相談ください。
● 肝がんを早期に見つけるための検査
- エコー検査:体への負担はなく、造影剤を使うことで(エコーの造影剤に副作用はありません)より鮮明に見ることが可能です。通常、私は10mm以下でできものを見つけます。
- CT、MRI(造影剤使用)での検査:CT検査の造影剤アレルギー、腎臓への負担等を考慮すると、頻繁に行う検査ではありません。(3.4カ月に1回は多すぎます)MRIの造影剤のアレルギーは少ないですが、実際に大規模病院で行うのは容易ではありません。(撮影時間が40分程と長く、実際に頻回には行えません)
- 腫瘍マーカー:肝臓がんには、AFP(エーエフピー)とPIVKA-Ⅱ(ピブカツー)があり、有意義な検査ですが、小さい肝臓がんでは異常値となることが少なくありません。
※右の図のように、通常のエコー(左)では見えにくいできものが、造影剤を使うことで、明らかに白く見えるようになります。
また治療後も、治療ができたかどうかを診断できます。
肝臓がんの治療法
- RFA(ラジオ波焼灼療法)、PEIT(エタノール注入療法)は、比較的小さい肝臓がんに用います。(私が行っている治療法で、患者様への負担が一番少ないと言えます)
- 血管造影:動脈の流れを止め(新しい薬も認可されました)がんを治しますが、小さいがんには一般的には用いられません。
- 外科手術:肝臓切除等があります。
②非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュと読みます) お酒はあまり飲まないのに肝臓の数値が高い方、医療施設では「脂肪肝です。」とだけ言われるかもしれません。しかし、脂肪肝と脂肪肝炎は違います。脂肪肝はほとんど進行しませんが、脂肪肝炎は、慢性肝炎、肝硬変、そして肝臓がんまで進行していきます。ただし、診断には、肝生検(肝臓を刺して、組織を顕微鏡で見る)が必要ですが、
- 太っている。(身長、体重から出すBMIが25以上)
- 脂質異常症がある(コレステロールが高い)
- 糖尿病がある。
- 親戚内に肝臓病の方がいる。
以上の4つがあり、肝機能以上、脂肪肝(エコーで、その程度もわかります)を認める方は要注意です。
場合によっては、その診断には肝生検が必要となる場合もありますが、食事指導が重要となってきます。食事による治療は、糖質制限が良いと思われます。
50人以上のナッシュの患者様を診ていますが(肝生検で診断)、軽症の方は、糖質制限をすることで、ほとんどの方が改善傾向にあります。
日本に200万人以上いると言われる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、今後、最も要注意の肝臓病です。
糖質制限
肝臓病の患者様の多くは糖尿病を持っていらっしゃいます。これまで、カロリー制限、糖質制限は通常の肝臓病の患者様に用いることはできませんでした。肝炎治療法の向上で、C型肝炎が治る方が増え、非アルコール性脂肪肝炎の方を含め糖尿病のコントロールが必要となり、特にその食事での治療が必要となってきました。
江部康二先生が2001年に初めて糖尿病の患者様に使用された糖質制限は、C型肝炎が治った方(ただし、その肝機能の状態によります)、非アルコール性脂肪肝炎の方に良い食事治療と言えます。
ただし、糖質制限を推奨される先生方の過度の糖質制限は、実際に行うと継続が困難なことが多く、患者様によっては違う病気を増悪させる場合もあります。
また、糖質制限のみで肉を食べることをすすめると、心筋梗塞、脳梗塞等の血管障害が生じてくるのも、最近に信頼度の高い海外の文献での報告もあります。
糖質制限(1回の食事で40g以下)をしながら、美味しい食事を頂くことが重要だと考えております。
また、糖質制限のみでは、健康な血管は維持できません。ω-3系(えごま油、あまに油等)を上手に加えることで、健康な血管を持つことが重要だと考えています。