見落とされる肝臓がん(見落としを無くすためには)

肝がんの診断には、画像診断が不可欠です。

腹部エコーは私が行いますが、CTやMRI(特に最近ではMRIの方が一般的には優れています)は大きな病院に依頼させていただいています。

依頼した画像は、個々の病院の放射線医が読影(どくえいと読み、専門医が所見を読み取り診断すること)していただいています。

しかし、残念ながらその読影で見落とされることが多いのが事実です。

最近も問題(読影での見落とし)となっているようですが、それは放射線科の医師のミスというわけではありません。

読影される医師が多忙過ぎるのも原因です。(大きな病院に勤務されている放射線医は、大量の画像診断をし、そのレポートと書かなくてはなりません)

私は、これまで、数万の画像を見てきていますので、腹部の画像に関する経験は多い方だと思います。

自分の経験といただいたレポート等を参考にして、最終診断は私自身で行っています。

画像診断を依頼したのは私であり、患者さんの診断に責任を持つのは、私自身であるべきだと思っています。

実際の例をお見せします。(以下の3例はどれも違う病院のMRIです)

①腹部エコーで、肝臓の一部に1センチほどの肝がんと思われる所見を認めました。

この部位でガンが大きくなると、治療が困難となります。(胆のうや大きな血管に近い)

造影エコーで、その所見が肝がんと診断しました。(右の〇部が白く見えています)

そこで腹部MRI(造影剤を使った)を依頼しましたが(他の部位にもないかどうかを含めた検査として)、「肝がんの所見なし」とのレポートをいただきました。

その時の画像ですが、〇の部分に白くなった8㎜ほどの部分を認めます。(ただし、本当に見落としやすい部位です)肝がんはラジオ波焼灼で無事治療できました。

②腹部エコーで、肝臓の一部に9㎜の所見を認め、造影エコーで肝がんと診断しました。(右の図で〇の白い部分)

腹部MRI(造影剤使用)を依頼しましたが、「肝がんの所見なし」とのレポートをいただきました。その時の画像ですが、エコーで指摘した部位に9㎜ほどの白くなった部分(肝がん)の所見を認めます。この方もラジオ波焼灼で治療できています。

③腹部MRI(造影剤使用)で2個の肝がんを指摘されました。(先にMRIを行った例)

外来で腹部エコーをしてみると、指摘された以外に2センチ弱の腫瘍を認め、肝がんと思われたため、造影エコー行い、肝がんと診断しました。

これは腹部MRIの所見ですが、確かに〇(肝がんがあると思われる部位)には所見がないようです。

腹部エコーでの造影で、時間が経過すると黒くなる所見があり肝がんと診断しました。

例を挙げると、まだまだたくさんありますが、見落としを無くすには、依頼した医師が、責任を持って診断することが重要だと思います。(責任を持てないのに依頼すること自体が正しいこととは言えないと考えます)

放射線科の医師より、私が気づかなかった所見を読影で指摘していただくこともありますので、読影のレポートは重要だと付け加えておきます。