肝がんの治療選択

肝がんの治療法は、①肝切除(がんの部分を切除する外科処置)、②ラジオ波焼灼術(がんの部分を焼いて治す内科処置)、③肝動脈塞栓術(がんに栄養を供給している動脈を止める内科的処置)があります。(①.②.③ができない方は、飲み薬を投与する方法、肝移植等もあります)

どの治療にするかは、基本的には肝臓学会のアルゴリズム(治療の方法や手順)に沿って行われることが多いのですが、受診された病院が得意とする治療法に沿って行われることも多いようです。

ある患者さんの例を提示させていただきます。

患者さんは50台の男性です。九州の南の方の大きな病院に通院されていました。

C型肝炎は、2016年に飲み薬で治っていました。

2017年に腹部MRIの検査で「肝臓の一部にガンらしきものがある。」と指摘されたようですが、CTでは解らないとのことで経過観察となり、その後も頻繁にCTやMRIの検査をされていたようです。

2018年10月のCT検査で、1センチのガンがあると指摘され、治療が必要と言われました。

担当の先生から、「肝臓を切除しなければいけません。」と伝えられてようです。

ご本人は「できたら肝臓を切る以外の治療法をお願いします。」と言われたようですが、担当医からは「切除すべきです。」と伝えられたようです。

その時の腹部MRI(EOB)です。〇の部分に肝臓がんを認めます。

2019年1月に私のクリニックを受診されました。(他の治療法を希望され)

造影エコーを行いました。通常のエコー(左の図)ではどこか変わりませんが、右の〇の部分に白くなる肝がんの所見を認めます。

2019年に、肝がんの治療を行いました。(私が行っています)

治療後の腹部CTですが、十分に治療ができていることが分かります。(黒くなっている部分が治療部です)

1年経過していますが、現在まで再発なく経過しています。

アルゴリズムでは、この大きさの肝がん治療は、①肝切除 ②焼灼となっています。

患者さんの希望は②(お腹を開けたくない)ですので、②とすべきだったと思います。

ただし、②を行う場合には、エコーで癌が見えないと行えません。

通院されていた病院では造影エコーは受けていないとのことだったので、検査される方がいらっしゃらなかったのかもしれません。(患者さんには不幸なことですが)

すべての治療法を患者さんに決めてもらうとなると、多くの問題が起こってしまいます。(やるべきではない治療法もあります)

治療法に選択がある場合は、患者さんの希望を優先させることは言うまでもないと思います。