造影剤が使えない肝がん治療

肝がんの治療を行う際は、事前に腹部CTや腹部MRIを行う必要があります。

ただし、それらを行うためには造影剤を使用する必要があります。

CTの造影剤はアレルギーのために使えないことがあり(特に何度も撮影するとアレルギーを起こしやすくなります)、MRIの造影剤も腎臓の機能に問題が起こってくると使いにくくなります。(腎機能を悪化させる可能性があるため)

肝臓がんを診断する造影剤で、アレルギーがなく、腎機能にも影響しないのはエコーで使用する造影剤のみです。

実際の使用経過を症例を通してご紹介します。

〇60歳台 男性

C型肝硬変の患者様で、C型肝炎は4年前に完治しています。(それでも肝がんはでてきます)

5年前からCTの造影剤にアレルギーを認め、その後は腹部MRI(造影剤を使用)で経過していましたが、腎機能が徐々に悪くなっており、腹部MRIも撮りにくい状況となっています。

ここ2年は腹部エコー時の造影剤(ソナゾイド)で経過観察していましたが、2019年11月に一部に再発肝がんの所見を認めました。


右の画像のの部分が白くなっていますが、そこが再発肝がんです。(大きさは13㎜)


再発した部位に対しRFA(ラジオ波焼灼療法)を行い、その効果判定に造影エコーを行っています。

治療後は、右の画像で白かった部分が消えているのが分かると思います。

腫瘍マーカーは、治療前のPIVKA-Ⅱ(ピブカツー)が48 MAU/mlが15 MAU/mlに低下しています。

すべての方が腹部エコーの造影剤で診断可能であるとは言いませんが、3.4カ月毎にCTやMRIを撮ることが常識化?していますが、丹念な腹部エコーとその造影剤使用で、CTやMRIの検査の頻度は減らせると考えます。(ただし、造影エコーは、その手技にかなりの経験と技量が必要であることを加えておきます)