アニサキス症が九州の生鯖では少ないという嘘

胃カメラをしているとたまに出会うアニサキス症、先日もお会いしました。
夕飯に生の鯖を食べられた方で、その夜は胃の痛みで苦しめられたそうです。
翌日来院され、胃カメラをしてみると、しっかりいました。ただ、もうアニサキス君の元気はありませんでした。(動いていませんでした)
緑の線で囲んでいる白い線みたいなのがアニサキス君です。すんなり取り出すことができました。

この方は幸運にも?一匹しかしませんでしたが、場合によっては数匹いることもあります。
また、その前には腸アニサキス症と思われる方もいらっしゃいました。
腸アニサキス症というのは、胃をすり抜けて(通常は胃の壁に喰いつきます)腸に喰いついて症状がでるものです。
2日前に生の鯖を食べられ、急にお腹の激痛がでた方です。(アニサキスで痛みだすのが通常より少し遅いという印象です)
胃カメラをしましたが、アニサキス君はいません。そこで超音波の検査をしてみると少量の腹水(お腹の水)が溜まっていました。(赤で囲んだ黒い部分が腹水の所見です)
お腹の水だけで腸アニサキス症と診断できる訳ではありませんが、痛みまでの経過を考え合わせると、胃をすり抜けて腸で悪さをした腸アニサキス症と考えられます。ちなみに、この患者さんはこの後も2日ほど痛みが続いたようですが、1週間後には腹水も消えていました。(胃カメラした時にピロリ菌も検出されたので除菌しました)

さて、ここからが問題です。
2011年の西日本新聞(福岡の新聞)で、「九州の生サバはなぜ大丈夫なのか?」という記事があり、この記事では東京都健康安全センターの2007-2009年の資料で、日本海側の鯖の80%以上がピグレフィー(アニサキスの種類)で、これが肉質に移行するのは0.1%(アニサキスは通常内臓にいて移動します)という報告があったようです。事実、アニサキス症患者100人のうち99人がピグレフィー以外だったとの報告もありました。
・・・、この結論からすると、九州の生鯖は大丈夫という勘違いを生みますね。
また、アニサキス症を診断した場合は公的機関(保険福祉局)への届け出義務はあります。
その資料を見ると、福岡市の平成28年のアニサキスの患者数は8人だそうです。
これはウソです。(多分、10倍以上の患者さんがいると思います)

確かに医療機関に届け出義務はありますが。届け出すると、患者さんは話をしないといけませんし、提供した飲食店にも調査が入ります。義務ですが、それを実際に行う医療機関はそう多くないと思います。(患者さんの痛みを思い出させることや、飲食店の営業のことを考えるとかなりハードルは高いと思います)
公的機関は、本当のアニサキス症の実際の数を報告することの方が良いと思います。(医療機関からの簡単な届け出のみで実際の数を把握するという方法など)

変な?記事で「九州の生サバは大丈夫らしいよ。」と思っている方、それは危険なことです。
私の友人で、2年連続で胃アニサキス症になった人もいます。
生鯖を食べるな!とは言いませんし、実際、私も好物です。
でも、その危険性は知っておくべきだと思います。