肺炎球菌ワクチンを考える

テレビで見る「あなたも肺炎球菌ワクチンを・・」というCM、内容はよく分からない方も多いと思います。
65才以上の方に・・というのは「ニューモバックス」という肺炎球菌ワクチンです。
肺炎球菌ワクチンは2種類あります。「ニューモバックス」と「プレベナー13」。
その違いを簡単に説明します。肺炎球菌はポリサッカライド(多糖体)でできている莢(さや)のようなものに包まれていて、その莢の成分は93種類に分類されています。ニューモバックスは、その型のうち肺炎や髄膜炎になりやすい23の型を選んで、莢膜(きょうまく)部の成分をワクチンにしたものです。ただし、このワクチンは人の免疫の力(人が病原菌を打ち負かす力)を上げることしかできませんし、鼻やのどの粘膜に着いてしまうのを防御できません。
プレベナー13は、より強く肺炎球菌に対し免疫反応を起こし(かなり雑な説明ですが)、なおかつ鼻やのどの粘膜に着くのを防ぐことができるという優れものです。
と聞けば、65才以上の方に・・に使われているニューモバックスは大丈夫?と思われるかもしれません。そこで今日は最近の海外の文献からの結果をみてみます。

① New England J Med.2015年3月
「大人(と言っても高齢者)の肺炎球菌予防ワクチン(プレベナー13)の予防効果」
65才以上の84496人を登録して比較試験を行い、約4年の経過観察をした結果、ワクチンを使った人は33人、使わなかった人は60人の方に軽い肺炎(つまり45%予防された)、重症の肺炎は使った人7人、使わなった人28人(つまり75%予防された)という結果がでています。
② Lancet Infect Dis.(ウェブ)2017年1月
「65才以上のニューモバックス使用の効果」についての論文です。
65才以上2036人の肺炎患者さんを調べた論文です。痰の培養、遺伝子検査で抗原型を含めて肺炎球菌を検出して調べています。全ての肺炎球菌肺炎27.4%、ニューモバックスに合致する血清型では33.5%減少させたという結果でした。つまり、かなり効果が認められたという論文です。

最近の文献で(比較試験はありませんが)、両方とも優れた効果を持っているのは事実です。同じなら価格が安い(プレベナー13はニューモバックスの価格の約2倍するということは、知られていないようです)方を予防に使うというのが国の政策としてはいいと思います。今後、プレベナーとニューモバックスの大規模は比較研究が出てくれば分かることだと思いますが、今はそれほど変わりないと考えていいかもしれません。(自費で使うならプレベナー13にしておかないと、次回の公費負担はできませんので注意は必要です)