肝臓の硬さが分かる超音波検査(超音波エラストグラフィ)

肝臓の硬さが分かる超音波検査(超音波エラストグラフィ)

超音波検査にエラストグラフィという一般の方は耳慣れない検査があります。日本語にすると弾性計測?、簡単に言うと「肝臓の硬さが分かる検査」という感じでしょう。
この技術はかなり前から利用されており、特に乳がんで多く利用されています。

肝臓の硬さを知ることは、その病状の診断にとても大切です。
ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝(特に脂肪肝炎)の他、原発性胆汁性胆管炎、自己免疫性肝炎等で、その進行を知る時に硬さが分かると色々な面で有用です。
肝臓の病気がすすむと肝硬変になります。肝臓が硬く変わってしまうのです。正常なレバをレバ刺しとすれば、肝硬変は焼いたレバという感じです。

肝臓が硬くなることは線維化といい、線維化がすすむと、肝臓の働きは悪くなり、肝がんもできやすい状態になります。ですから、線維化を肝生検(肝臓を刺して組織を採取する検査)せず分かれば、患者さんにとっても医者にとってもとても有用です。
2000年頃から、ファイブロスキャンという、肝臓の硬さが分かる装置で硬さは解るようになりましたが、その装置はどこにでもあるものではなく、また、硬さが分かる検査装置以外には使い道がないものでした。

通常のエコーの検査の時に、痛みが全くない検査法で線維化が分かれば患者さんにとても有益です。
エコーのエラストグラフィは、大きく分けて二つの方法があります。(Strain imagingとShear wave imagingです)
それぞれの理論を説明するとかなり長くなりますが、どちらも良い検査だと思います。
例えばShear wave imagingで計測してみます。画面の下に小さく表示されます。(これってもっと大きく表示して欲しい)この数字(赤〇)が大きくなれば肝臓が硬い!ということになります。(ちなみに右の緑〇はこの検査がどれほど信用できるかを数値化したもので65%以上が推奨されています)


また、Strain imagingを併用することで、よりその信頼性が上がります。
実際、私はこの計測を始めた頃は、「これって遊び程度に使うものじゃないかな?」って疑っていましたが、100例以上の肝臓病の患者さんに使ってみると。「こいつは案外使える!」という印象です。
C型肝炎が治った後の患者さんをみるのに、徐々に柔らかくなってくるのを把握することも可能になってきます。(肝臓が柔らかくなることは、肝がんができにくい肝臓になることを意味します)

ただし、エコー検査のみでの過信は禁物です。
そもそもどの検査も、これだけやれば100%というものはありません。
M2BPGi、ヒアルロン酸などの肝臓の線維化マーカー(血液検査)と併せてみることにより、更に信頼度は上がります。

肝機能の異常を健診などで指摘され、お腹のエコーをされた時は、「肝臓は硬くなっていませんか?」と聞かれるといいと思います。
どのエコーの機械でも行える訳ではなく、また、この検査を行っても現時点では保険点数を加算できないのが現状です。(患者さんの負担にならない利点もあります)
検査のやり過ぎは問題ですが、有用と思え、患者さんに痛みを与えない検査は必要だと思います。