高尿酸血症は治療すべきか?

「尿酸値が高いですね。治療が必要ですね。」と、医師から言われたことがある方は多いかもしれません。
確かに痛風発作を起こされたことがある方で、減量し、飲酒を控えるなどを行っても尿酸値が下がらない方は、尿酸値を下げる薬を飲むのは当然のことです。
ただし、この薬の認識にも欧米とはかなりの差があります。
日本では、高尿酸血症のガイドラインというものがあり、偉い先生方が尿酸値の高い方の治療に対する考え方を教えて下さる、ありがたい?もので、一般の開業医はそれに沿って病気を考え、処方を考えることが多いようです。
高尿酸血症のガイドライン(最新版は2012年)では、尿酸値を下げるために、患者さんの状態を調べて、①尿酸をおしっこで出させる薬、②尿酸を体のなかで作りにくくする薬のどちらかを選択して処方するように指導?されています。
一見すると妥当な考え方です。では、海外ではどうなっているでしょうか?
ガイドラインを作られた先生方は、当然、海外の文献を参照されて作られたはずですが、海外(特にアメリカ)では、ほぼ②の薬しか処方されていません。
日本のガイドラインが間違っていないかもしれないと言える部分はあります。
それは薬の値段です。①の薬は発売されて長い年月(1950年~1970年代)が経っているので、ジェネリックを使うと一錠10円以下です。(1カ月処方されても300円未満ですから、3割負担の方で薬代だけなら100円以下)素晴らしいことだと思います。
②は古い(1969年発売)もありますが、新しいもの(2011年発売)が使われることが多いため(ジェネリックもまだ発売されていません)、一錠30円~100円(使われる薬の量で変わります)と高くなります。安全性(肝機能障害など)、飲み方(一日1回)を考えると②かもしれませんが、3倍以上高いというのは(しかも長期に飲まなければならない)気にしないといけないことだと思います。

さて、話を戻します。
痛風発作を起こしたことがない方でも尿酸値を下げる薬を飲まないといけないでしょうか?
この疑問の答えと思われる文献があります。
ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(イギリス医師会雑誌:British Medical Journalで略してBMJ)の6月号に報告があります。(BMJは世界的に信頼度が高い医学雑誌です)
「高尿酸血症の健康への影響」についての報告です。
この文献は、これまで報告されてきた多数の文献報告をまとめたものです。
結論は、「明らかな関連はなかった。」という結果でした。
(高尿酸血症と心不全、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、冠動脈性心疾患死の危険度の増大に明らかな根拠はないという結論です)
現時点では、尿酸を下げると痛風発作と尿酸結石の改善に効果があるということだけが
明確なのです。
2017年6月時点で、一番信頼度が高いと思われる文献では、尿酸値が高いから治療すべきという考え方は正しくないと言っていいかもしれません。

高尿酸血症のガイドラインの中には疑問を感じる記載が色々あります。
例えば、腎臓、高血圧、心臓病との関係について記述に疑問を感じます。
書かれていることが、現在では世界の常識である風に記載されていますが・・・。
なお、エビデンス(科学的根拠と訳され、医学的に正しいと判断される根拠です)は、1~6まであって、2以上であればかなりその根拠は信頼されることを示します。
○腎障害「1.血清尿酸値は慢性腎不全(CKD)の発症や進展と関連する。エビデンス2b推奨度A」「2.一般集団において高尿酸血症は腎不全の危険因子である。エビデンス2b.推奨度A」
つまり、尿酸値が高いと腎臓が悪くなるよ~と書かれていますが、これは信じがたい。
○高血圧・心血管系疾患「1.血清尿酸値は将来における高血圧発症の独立した予測因子と捉えることが可能である。エビデンス1b.推奨度A」
これは、尿酸値が高いと高血圧になるよ~と言われますが、一部に文献でのみのことです。
などなど、日本の偉い先生方はご自分が好きな?文献を選択されて、開業医を指導して下さいます。疑問を持たなければ(最新の文献を読まなければ)、ガイドライン詐欺にあうこととなります。
日本のガイドラインを無視すべきとは思いませんが、疑いをもって読むことが大切だと思います。

2017年6月時点では、「高尿酸血症は治療すべきか?」と問われたら、
「しなくてもいいです。」と答えるのが正解だと思います。(ただし、これまでに痛風発作を起こされた方は治療しなくてはいけませんよ)