肝細胞癌の治療例(C型肝炎が治った後に出てくる肝がん)
C型肝炎に治療はここ数年で飛躍的によくなり、これまで治療できなかった方も完治するようになりました。素晴らしいことですが、一方C型肝炎ウイルスが消えた後に出てくる肝細胞癌(以下、肝がん)が問題になってきています。
数カ月前に経験した患者様をご紹介します。
○70代の男性。2年前に飲み薬でC型肝炎は完全に治りました。(ウイルスは消えました)
その後も3.4カ月に1回は外来に通院していいただいていました。
ある日のエコー検査(超音波検査)で、肝臓に影が見えました。(見つけるのも困難な影でした)ただし、エコー検査のみでは肝がんがどうか判断できません。そこで造影エコーを行ってみました。
○画面の左が通常のエコーですが、赤丸部分の影が造影剤を入れることで右の白く見える部分が明確になってきます。(10数分後の再度観察すると黒く変化し肝がんと診断できました)
肝がんのサイズは14㎜で(私は、10㎜前後の大きさで見つけることが多いのですが、エコーでみつけにく肝がんであったと思います)ラジオ波焼灼療法で治療させていただきました。
治療後の効果判定(治療がうまくいったかどうか)も造影エコーで行います。
○治療前に白くなっていた部分は黒くなっており(右画面)、治療ができていることが分かると思います
この方は、真面目に通院していただいていたので、無事治療ができましたが、一般的にはどうでしょうか?
医療関係者の方であれば、①「腫瘍マーカーはどうだったの?」(肝がんがあると上がると言われる血液検査)、②「C型肝炎の治療時には肝硬変で、血小板が低かったりM2BPGI(肝臓の硬さをみる血液検査)が高かったりしたのでは?」と言われる方もいらっしゃると思います。
そう簡単であればよかったのですが、この患者様の場合、
① 治療前のAFPは5ng/ml(一般に10以上が異常値)でL3分画(肝がんの悪性度を示す血液検査)も0.5%未満、PIVKA-Ⅱ12MAU/ml(40以上が異常値)でした。
② 肝臓の硬さを見る血液検査は正常値で、肝臓の硬さをみるエコー検査、血小板も正常でした。
つまり、一般的には肝がんができにくいと思われる状態だったのです。
肝臓専門医と言われる先生に診ていただいている患者様たちは、どうされているのでしょうか?
「治療後も定期検査は必要です。」と言われ、定期的に採血(3カ月ごと?)にされているだけでしょうか?
C型肝炎が治った後にも、定期的にCTやMRIを撮るような過度の検査はされていないでしょうか?
長期間の定期のCTは被ばく等の問題がありますし、MRIもその造影剤の問題を指摘されています。
しかも検査自体がかなり高額な検査となります。
エコー検査は無害(エコー時に使用する造影を含め)です。
たたし、最近は医師ではなく検査技師さんがエコー検査を行う施設が多く、早期の肝がんの見つけるのは困難な状況となっています。(検査技師さん方の検査が上手ではないと言っているわけではありません。本来は、数百例以上の肝がん治療を行った経験がある医師がエコー検査をすれば、より早く肝がんを見つけることができる可能性が高いという意味です)
C型肝炎ウイルスの治療薬の進化により、完治している患者様が増えている今だからこそ、ウイルスが消えた後に出てくる肝がんの発見と治療が重要になってきていると考えます。
「C型肝炎は治ったけど、肝がんで亡くなってしまった。」という悲劇は、あってはならないことだと思います。