睡眠薬と認知症

睡眠薬を飲むと認知症になる?と思われている方もいらっしゃると思います。

2014年9月のBMJ(イギリス医師会雑誌)という権威ある雑誌に、睡眠薬(ベンゾジアゼピン系睡眠薬)を3か月以上使用したらアルツハイマー病の発症リスクが約1.5倍になると発表されました。

信頼ある雑誌からの発表なので、これをいまでも信じている方もいらっしゃいます。

しかし、2015年6月のDrug Safety誌(BMJに比べると権威は低いですが)には、ベンゾジアゼピン服用と認知症発症は関係ないと発表され、2016年2月にもBMJ(イギリス医師会雑誌)で、ベンゾジアゼピン服用とアルツハイマー型認知症に関係なしと発表されました。

「権威ある海外の雑誌で、〇〇と言われたからといっても、その後に相反する結果が示されることは多々あることなので、簡単に信用してはいけない」ということが重要です。

最近の発表としては、2023年3月にAnnals of Neurology(ある程度権威ある医学雑誌)には、ベルソムラ(一般名スボレキサント)を内服するとアルツハイマー型認知症の予防に効果がある可能性を示唆する発表がありました。(ただし、症例数も少なく、予防すると断言できるものではありませんので鵜呑みにはできませんが)

現時点では、睡眠薬を飲むと認知症(アルツハイマー型認知症)になるというのは否定的と思われ、ベルソムラは認知症の予防になるかもしれないという理解で良いと思います。

ただし、安易にベンゾジアゼピン系睡眠薬を継続するのは推奨されません。(10年以上継続していると、その効果自体もあまりない状態となっている可能性大です)

長期にベンゾジアゼピン系睡眠薬を継続されている方は、中止の方法を医者に相談されたり、ベルソムラ等の比較的安全な睡眠剤に変更されることをお勧めします。(ちなみに、イギリスのガイドラインでは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用は4週間以内が基本で、すくなくとも6か月を超えないのが基本です)